2021.10.06
製造業界におけるファクタリング活用の実態
製造業界の資金調達方法として、「ファクタリング」に注目が集まっていることをご存知でしょうか。
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、規定の支払い期日以前に売掛金を現金化できる金融サービスです。
そのファクタリングが、なぜ製造業界で人気があるのかを解説します。
1 製造業界で多用されるファクタリングの現状
製造業界でのファクタリング活用は、他業界と比べて進んでいます。
そんな製造業界で多用されるファクタリングの現状について解説しましょう。
1-1 製造業界の現状について
かつては「ものづくり大国」と呼ばれていた日本ですが、第4次産業革命によってその地位が崩れつつあります。欧米諸国ではスマートファクトリー化(工場の自動化)が急速に進められ、先進的な製造プロセスが生まれていますし、新興国の低コスト生産も脅威となっているのです。低コスト生産が当たり前になると、元請けからの値下げ要求もより厳しくなることが予測されます。その他、国内の少子高齢化によるマーケット縮小や人材不足、技術継承など、問題が山積みです。
今後、日本でも資金を投じてI T活用を進めていかなければ、世界から取り残されてしまうでしょう。
製造業界に身を置く下請け企業は、取引先の値下げや返品要求などに応えなければならないことも多く、後払い方式の受注が一般的なので製造過程で必要な材料費や人件費を数ヶ月間も建て替えなければならない、という現状があります。このような状況でIT化に資金を投じたいと考えても、なかなか実行するのは難しいでしょう。
1-2海外の製造業者にはメジャーなファクタリング
日本ではまだそれほど認知度が高いとはいえないファクタリングですが、すでに欧米諸国の製造業者の間ではメジャーな資金調達方法として活用されています。欧米におけるファクタリングの歴史は古く、14〜16世紀頃にイギリスで生まれ、20世紀の初頭にアメリカで発展していったといわれています。
日本に入ってきたのは1970年代ですが、手形取引が一般的であったことからあまり浸透しなかったと考えられます。しかし現在では手形取引は減少して売掛取引が増え、政府による法整備が進んだことによってファクタリングに注目が集まるようになりました。
1-3 製造業界の資金繰りにファクタリングがどう貢献している?
「売掛金の現金化さえできれば…」「今すぐに資金を調達できれば…」という多くの製造業者の願いを叶え、黒字倒産を防いでくれるという点で、製造業界の資金繰りにファクタリングは大きく貢献しています。
製造業界は、元請けから依頼された製品と引き換えで報酬が入金される後払い方式が一般的で、入金までは売掛金となります。元請けとの関係性によって違いはありますが、契約した期間内に納品した製品の代金は、締め日からさらに1〜2ヶ月経ってから入金されます。製品を作るためには材料費や人件費が必要となりますが、その資金について先払いがあるわけではないので、数ヶ月先の代金入金まで、下請け企業がそれら費用の建て替えをしなければなりません。さらには、工場の機械が不具合を起こして修理が必要になったり、完全に壊れて買い替えが必要になったりすると、急遽多額の資金が必要となることもあります。このような状況において、売掛金はあっても十分な現金が手元になければ機械の買い替えはできません。当然のことながら、機械がなければ製品を製造することができませんので、結果的に黒字倒産してしまうことにもなりかねないのです。
その他、製造業界ではライバルとなる業者も多く、過酷な値下げ競争により多少の無理は承知で発注を受けている業者もあります。こうした事態が続くと、材料費や固定費などを支払い続けていく体力はどんどん低下していってしまうのです。将来的に支払われる代金には材料費や固定費が含まれているのですから、先に代金を入金してもらえればこの問題は解決するわけですが、元請けから代金の先払いをしてもらうことは現実的ではありません。
そこで救世主となるのがファクタリングです。ファクタリング企業は売掛金を買い取ってくれるので、その資金を材料費や機械の購入代金に当てることができるのです。
また、機械の故障から納入までの期間が短い場合は、資金調達までのスピードも重要です。その点においても、ファクタリングは最短で即日調達も可能となるので、貢献度が高いといえます。
1-4 製造業界で融資よりもファクタリングが選ばれる理由とは
融資では一般的に、担保・保証人が必要、審査が厳しい、時間がかかる、というデメリットがあります。それに対してファクタリングは、担保・保証人不要、主な審査対象は売掛先、最短即日調達が可能と、こうしたデメリットが全てクリアできる資金調達方法となっています。
売掛金の回収までの期間が長くて資金繰りに余裕がない、機械の故障で急に資金が必要になる、原材料の支払い期限が迫っているなどの場面が多い製造業界では、融資よりもファクタリングの方が使い勝手が良いのです。
2 製造業界で資金繰りが苦しくなる場面とは?
製造業界で資金繰りが苦しくなる場面とは、どのような場面でしょうか。
ご紹介するような場面において、ファクタリングは有効な金融サービスといえます。
2-1 内部留保が不足する
総資産に対する内部留保の比率は、財務の健全性を示す指標でもあります。内部留保が不足すると、自己資本比率が低下し融資を受けることが難しくなるので、資金繰りが苦しくなってしまいます。
☆ファクタリングで得た資金は負債にはならないため、自己資本比率をあげることができます。
2-2 大型案件は受注したいが…資金繰りが心配
大型案件の受注は、大きな利益を得るチャンスではあります。しかしその一方で、それだけの製品を製造するには、事前に多くの資金が必要となります。資金繰りがギリギリの状態では、何かトラブルがあったときに対応できず黒字倒産してしまうリスクがあるのです。
☆ファクタリングで現金化できれば、大型案件の受注も可能です。
2-3 急発注にも対応できる体制づくりが難しい
急発注を受けるためには、その発注に対してかかる材料費や固定費を立て替えるだけの十分な資金が必要です。ある程度計画的に受注している案件ですら資金繰りに苦しむ企業が多い中、急発注に対応できるだけの体制を整えるのは困難といえます。
☆ファクタリングは早期の現金化ができるので、急発注にも対応できます。
2-4 入金タイミングが一定ではないことによる資金繰り悪化
全ての案件の入金タイミングが一定であれば、
案件①からA入金→案件②にAで支払→案件②からB入金→案件③にBで支払
という安定したサイクルで支払いを進めることができます。
しかし、案件によって締め日や入金日が異なりますし、案件の大きさによって必要な資金が異なったり、急遽納入数の変更が入ってしまったり、入金を遅らせて欲しいと頼まれたり…、資金繰りが悪化する可能性があります。
☆ファクタリングを活用すれば、入金タイミングを気にする必要がなくなります。
2-5 手形商売によるリスクに直面
手形は支払期日に額面金額の支払いを約束するものです。しかし支払い期日の時点で振出人に支払い能力がなければ不渡りになってしまい、受け取りの損失となってしまうのです。手形商売は、こうしたリスクを孕んでいます。
☆売掛取引+ファクタリングで、不渡りリスクからも解放されます。
3 製造業界でファクタリングを具体的に検討する場合には
製造業界が直面するリスクに対して、ファクタリングの活用が有効であることを感じていただけたでしょうか。
この章では、具体的にファクタリングの利用を検討するときに抑えておきたいポイントを4つご紹介します。
3-1ファクタリングに必要な資料を揃えておくと審査がスムーズ
ファクタリングには審査がありますので、複数の資料提出が求められます。
多くの場合に必要となる資料は、
「印鑑証明」「登記簿謄本」「本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)」
「2〜3期分の決算書」「売掛債権(請求書など)」「納税証明書」
「通帳コピーなどの入金履歴が証明できるもの」
などです。
事前に必要な資料を揃えておくと審査がスムーズに進みますので、より早く資金調達ができるようになります。
3-2 スケジュールを把握して支払い期日に間に合わせる
せっかくファクタリングを利用しても、支払い期日に間に合わなければ意味がありません。買取代金が入金されるまでのスケジュールをきちんと把握しておきましょう。
大まかには、
相談→申し込み→必要書類提出・ヒアリング→審査→契約→入金
のスケジュールで進んでいきますが、提出すべき書類を準備したり、ヒアリングのための面談予約に時間がかかったり、3社間ファクタリングで必要となる売掛先の承諾を得るのに時間がかかったり…といったことも考えられます。ファクタリング企業によってもスケジュール感は異なりますので、初めの相談の時点でスケジュールをよく確認しておくようにしてください。多少手数料が高くても、既定の支払い期日に間に合うファクタリング企業と契約するなどの判断も必要です。
3-3 見積依頼は数社に依頼して検討する
悪徳業者に騙されないよう、また自社に最適なファクタリング企業を利用できるよう、見積もり依頼は数社に出すようにしましょう。
見積もりを比較する際には手数料だけではなく、事務処理費用、出張費、債権譲渡登記費用などの諸費用の取り扱いをよく確認しましょう。諸費用が手数料に含まれている場合、別途請求される場合があり、手数料が安くても最終的に高くついてしまう可能性もあります。
もちろん、サービスの内容も企業によって異なります。担当者の対応などもよくみて、信頼のおける企業と契約しましょう。
3-4 リスクについて把握した上でファクタリングを利用する
ファクタリングを利用する際には
・手数料がかかる
・売掛先に売掛譲渡の事実が伝わってしまう可能性がある
というリスクを把握しておきましょう。
計画的に利用しなければ手数料分の利益が減り続けてしまいますし、売掛譲渡をしていることを知った取引先に契約を打ち切られてしまう可能性も0ではないのです。
4 まとめ
後払い方式の契約が一般的で、製品の納品までに多くの材料費や人件費・光熱費などの固定費がかかる製造業界では、資金繰りが苦しくなる場面が多いです。このような場面で売掛金を早期に現金化できるファクタリングの活用が有効となります。
黒字倒産になってしまう前に、ファクタリング活用について検討してみてはいかがでしょうか。